第24話 南風―ダーティ&ザンキ、ソドリッド到着前日のんびりと茶をすすっている親父2人にソフィアは少し息をつくと、上がった。 「おじさん、自分は何もやらないの?」親父2人はやっとソフィアに気づいた。 「ん?うちの小僧はどうした?」もう小僧と呼べる歳ではないのだが・・・ 「でかけた。」ソフィアが脱いだ靴を端に寄せながら言った。今日は左の腰に2本の剣が差してある。 「どこにだ?まさか逃げたか?」グレゴッツがお茶を飲み干し終わってから言った。 「そんなわけないでしょ。オルメシアまでちょっとね。しばらく帰らないわよ。」 「そうか・・・・じゃ、俺はこれで失礼するよ。ごちそうさん。」グレゴッツは立ち上がって大またでソフィアとすれ違った。すれ違う際に、 「気合入れろよ。」と一言言うと、出て行った。 「何のはなししてたの?」ソフィアが2つの茶飲みを上座に持ってっているデプトにきいた。 「今度の試合の件だ。明後日になった。」デプトは茶飲みを上座に置くと、すぐ横の木刀置きから1本、壁にかかっているのから1本取り出した。 「さてと、今日からは奥義を覚えるための基礎からやるぞ。」デプトが木刀の柄を何度も握りながら言った。 「いまさら基本?」 「そうだ。剣は使わない。これを使え。」デプトがソフィアに壁にかかっていた方の木刀を一本投げて渡した。よく見ればこれはソフィアが5年前までに使っていたものだった。名前も彫ってあるし、他のものよりも刀身が長い。 「懐かしいだろ?」デプトが笑いながら言った。親子の笑顔はよく似ている。 「そうね。これでよくダーティのすねをぶつけたものね。」その度にダーティはピョンピョンと飛び跳ねていた。 「よし、いくぞ・・・構えろ。」デプトが自分の木刀を右手で持ち、左手を伸ばして前に突き出している。 「・・・?何やる気?」ソフィアが急いで構えた。 「はっ!!!」右手に構えた木刀を勢いよく前に突き出した。一瞬ソフィアわけがわからなかったが、すぐに、体がのけぞっているのに気づいた。しかし、体制を立て直す事ができず、そのままどんどん後ろに飛び・・・壁に吹っ飛ばされた。壁に叩きつけられたソフィアは、すぐに立ち上がった。 「痛たたたた・・・」格子が1本折れてしまったようだが、ソフィアに怪我はひとつない。 「今のはなんだか分かるな?」大きな息をついてから、木刀を杖代わりにしながら言った。 「グレナデス流剣術・・・一の秘、南風・・・」ソフィアが吹き飛ばされたとき落とした木刀を拾いながら言った。 「そうだ。衝撃波を飛ばす。しかし、あまり威力は期待できないのが現実。」 「それが奥義につながってるって?」服をはたきながらソフィアが言った。少しずれた赤いハチマキも元の位置に戻した。 「もちろん、できるよな?」 「あたりまえでしょ。誰だと思ってんの?」 「じゃぁ、やってみろ。遠慮せずこの父にな。」 「いいの?」ソフィアが笑いながら言った。こんな事を言ったが、もうデプトと構えている。 「構わん。」木刀を腰に差して、腕組みをしながら言った。 「本当に?ハイスピードでもっと強力な衝撃波出ちゃうわよ?」 「早くしろ。」 「じゃぁ御構い無く。・・・ハッ!!」右手に構えた木刀を前に突き出した。 の、だろう。早すぎてデプトには見えなかった。娘にビビって歯を食いしばり、覚悟を決めた。の、だが・・・何も起こらなかった。そう思ったのもつかの間、デプトの右後方で爆発が起こった。壁は跡形もなく吹き飛んで、ぽっかりと穴が開いた。 「・・実の父に当てるわけないでしょ。こんな威力があるのに。よくこれで木をなぎ倒したものね。」これでブーステッド流格闘術道場に続き、グレナデス流剣術道場の門下生にひんしゅくを買われなければいけなかった。デプトにとってはいいのか、悪いのか・・。 第24話完 |